「随分と遅かったじゃん。何してたの?」
「べ、別に?」
「いやいや、ジュース買いに行った人が突然シャツ1枚で戻ってきたのに、何もないわけないでしょ。カーディガンどこやったの?」
「………落とした」
「は?」
我ながらなんて適当な言い訳だろう。
一体どんな生活をすれば、着ているカーディガンを落とすんだ。
もっとこう……水に濡れたとか、汚れたとか、あったろうに。
「落とすわけないでしょうが!」
「えっと……走ったら脱げちゃって」
「何その気持ち悪い走り方…………どう走ったらカーディガンが脱げるのか教えてほしいくらいだわ」
的確な皐月のツッコミも、今日だけは苦笑いしか返せない。
というか、昼寝している相崎くんの体に掛けたまま逃げてきた。なんて本当のことを言っても、たぶん信じてくれないと思う。
「暑いから捨てたの!それだけ!」
忘れ掛けていたオレンジティーのキャップを開け、乾いた喉を一気に潤した。



