極悪プリンスの恋愛事情



結局、少し悩んでから出てきた言葉はとてもありきたりなもの。


「…………ありがとう。嬉しい、です」


私、喋るの下手くそだな。

火照った顔を隠す余裕もなく、俯いてそう答えた。

熱が上がりすぎてふわふわする。


「ありがとうって……随分優しいんだね。そんな答え方されたら、ちょっと期待しちゃうんだけど」


「え!?いや、そんな深い意味は………」

「ははっ、すぐ否定されると傷つくなぁ」


「ご、ごめん……。でも嬉しいのは本当だよ?」

「うん、ありがとう」


優しく微笑む岸本くんを見たら、少しだけほっとした。


よかった……笑ってくれて……。