変に食いかかって強引に詰め寄ってる自覚はある。
椅子から離れたところで凛くんとの距離が変わらないのも知ってる。
天井を見上げるくらい顔を上げなきゃ表情なんてわかんないし、たとえ見えても凛くんの考えてることなんてさっぱりだ。
それでも、今ここで動かないと一生わからないままだと思った。
ほんの数ミリ程度だとしても、凛くんの心が私に向いているような気がしたから。
「私は……今も凛くんしか見えてないよ」
離さないように、離れないように、じっと凛くんを見つめた。
「はぁ…………」
けれど、わざとらしくため息を吐かれる。
うっ……。
流石に調子乗りすぎたかな。
今ならまだ引き返せる。そう思って咄嗟に「ごめん」と謝った。
途端─────。
「………うるせーな」
クイッと顎を持ち上げられる。
ドキンと心臓が飛び跳ねて、じわりじわりと近づく距離を拒めない。
ち、近いよっ……………。
耐えられずに目を閉じる。
凛くんの吐息が鼻先に触れた瞬間、すぐさま呼吸を止めた。



