「………別に」
顔色ひとつ変えずにそう言うと、ドアを閉めて私の前で足を止める。
こんな風に凛くんとまともに顔を合わせるのは久しぶりだった。
たぶん、岸本くんに勉強を教えてもらう約束をした日以来だと思う。
あれからなんとなく凛くんに会うのが気まずくて、昼休みに中庭に行くこともなくなった。
朝のおはようすら言わなかったし、たまに目が合っても逸らすのは私の方が先だった。
もしかして、あからさまに避けてるから文句言いに来たとか………?
私を見下ろす凛くんと視線が重なる。
緊張した手のひらにじわりと汗がにじんだ。
「お前さ、俺のことが好きなんだろ?」
突然の問いかけにビクリと体が震える。
冷たい視線に囚われて、今は逸らすことすら難しい。
「そうだけど…」
「じゃあ、なんで瑛斗と一緒にいんの」



