極悪プリンスの恋愛事情




「行くな」



突然聞こえた声と共に、手を掴まれた。


見上げた先に映った人の姿を確認して、幻なんじゃないかと2回3回と瞬きを繰り返す。

もちろん消えるはずはない。


「凛、くん……?」


自然と滑り落ちた言葉に自分でも驚いた。

そして、口にしてからようやく確信に変わる。凛くんが今、ここにいると。



「なんで、凛くんがここに……てゆうかその格好…………」

「勘違いすんなよ。こんなのただの気まぐれだから」


「え、なん ─────………わっ!?」


なぜ凛くんがここにいるのか。

その理由を聞けないまま強引に腕を引かれた。



「おい、凛!」


背中越しに岸本くんの声が聞こえる。

けれど、振り向く余裕もないくらい腕を引かれる力が強かった。