極悪プリンスの恋愛事情



「女嫌いなのに優しいから、かな………」


今にも消えてしまいそうなほど力のない声。

改めて口にしたら変な感じがした。


凛くんを好きな理由なんて、本当は言葉ひとつじゃ全然足りない。

恋は理屈じゃないとよく聞くけど、自分が恋をしたらその通りだなってはっきりわかった。


だって、全部好きだもん。


きっかけは一目惚れだったけど、今は関係ないって本気で思っているから。


「凛のことよくわかってんだね」

「え、いや、わかんないことばっかだよ!?ただ、私の知ってる凛くんはそんな人かなって……」

「ううん、よくわかってるよ。凛のこと優しいって言うの花野井ちゃんだけだし」


私だけ……?


岸本くんの言葉を聞いて、ふと極悪プリンスという名が頭を過ぎった。


顔はいいけど性格は最悪だからと付けられた凛くんの別称。


否定はしない。

けれど、彼は冷たいだけじゃないと私は知っているから。


みんなは知らないだけなんだよ。

不器用なりに温かい凛くんの姿を。