極悪プリンスの恋愛事情



あれ……この声って……。

今のくしゃみを声と呼んでいいのかは謎だが、とにかく聞き覚えのある声に、また足の動きを止められた。


たぶん、たぶんだけど。

片想い歴1年半の私の耳を信じるなら、この声は─────。


ごくりと息を呑む。


湧き上がる好奇心が抑えきれず、茂みに隠れた主を一目見ようと、抜き足差し足で近づいた。


ドキドキとうるさい心臓の音を全身に感じながら、恐る恐る茂みから顔を出してみる。

すると、そこにいたのは─────。



「…………んっ…」


ごろんと芝生の上に横になった極悪プリンスが、すやすやと気持ちよさそうに眠っていた。