極悪プリンスの恋愛事情



「え、あっ……ちょっ……」


慣れた手つきで操作して、止める間もなくスマホを耳に当てている。

どうすればいいかわからず停止していたら「もしもし?」と、電話が繋がった。


「なんだ寝起きかよー。本当に来るつもりなかったんだな」


凛くんの声は聞こえないけれど、いつもの如く不機嫌なんだろうと悟った。

ケラケラと楽しそうに話をする岸本くんをじっと見つめて、どうしようと思考を巡らせる。


岸本くんが呼び出したくらいで凛くんが来るとは思えないし、私のせいで怒られちゃうかも。

いや、むしろ私が電話を掛けさせたって思われたりするかな…………。


「もうすぐ後夜祭始まるから来いよ。花野井ちゃん待ってるよ」

「ひぇっ!?」


なんの躊躇いもなく言うからびっくりして肩が飛び跳ねた。

目の前で慌てる私を無視して「どうせ暇だろー?」と、話を続けている。


やばいやばいやばい!!!

来てくれるならそりゃあ嬉しいけど、こんな無理に呼んだら凛くん怒っちゃうよ。


一度断られたんだから潔く諦めなきゃ。