極悪プリンスの恋愛事情






それから私と岸本くんは、嫌な雰囲気を吹き飛ばすように、文化祭を思いっきり楽しんだ。


クレープやチュロスやりんご飴。食べたいと思ったらすぐお店に並んで、お腹いっぱいになったらステージの発表を見に行ったり、皐月のところにも顔を出した。


強引にはしゃいでしまったけれど、すごく楽しかった。



「あーあ。結局凛は来なかったし、文化祭ももうすぐ終わりだなー」


隣を歩いていた岸本くんが最後のたこ焼きを口に入れた。

私も「そうだね」と笑って、同じようにたこ焼きを頬張る。


ひと気の減った廊下や片付けを始める模擬店が目に入るたび、寂しいさが込み上げてきた。

なんだかんだ充実してたなぁ。


「てことは、後夜祭始まるのか。花野井ちゃんはダンスパートナー誰に頼んだの?」

「えっと……実は……誰にも頼めなくて1人なんだよね」


自分の乾いた笑いが情けなく聞こえた。

凛くんに断られたから当然だけど、ぼっちは普通に寂ししいもん。


「凛は来ないんだし、クラスのやつにでも頼めばよかったじゃん」

「あはは、私もそう思う。岸本くんはお誘いばっかで1人に決めるの大変そうだよね」