さっきからずっと、岸本くんの言葉が気に掛かってしょうがない。
まるで、本当の自分を隠して凛くんに合わせてるように聞こえたから。
よく考えてみれば思い当たる節はいくつかあった。
“───俺は凛と違って天才肌じゃないから”
“───女子は凛の代わりにしてくるし”
あれもこれも。
特に気に留めてなかったけど、言葉の奥に岸本くんの本心を隠していたのかもしれない。
「今日もさ、凛の代わりに頑張ったんだよね〜。慣れないことして疲れたけど」
背中越しでも無理して笑ってるのが伝わってくる。
何か言わなきゃって思うのに気の利く言葉が思いつかない。
凛くんに恋してる私じゃ………岸本くんを傷つけることしか言えないのかもしれない。



