月の中頃には冷蔵庫が満杯になることはなく、月末には寂しい食事だった。
私がバイトを初めてからは月始めに外食が出来るようになったけど、あとは大差なかった。
切り詰めての節約が当たり前だった生活。
今は……
その中で母が見つけて掴んだ幸せが見てわかる。
これを、私が壊そうとしている。
怖い……
「 伊織ちゃん、おかえり 」
「 あ、こんばんは。先に頂いてます 」
まだ、お父さんとは口に出せていない。
早く慣れないと心配させてしまう。
そんな私を気にかけて、歩み寄ってくれる父は優しい。
「 碧斗はバイトだから、伊織ちゃんたくさん食べて 」
「 はい 」
楽しい食卓、私の前で弾む会話が胸に苦しさを与える。
笑っても、心が笑わない。
「 碧斗とはどう? あんまり喋らないから不安かも知れないけど根は優しい奴だから 」
根は優しい、と思う。
でも喋らないわけじゃなくて、喋ると悪意を感じるんだよね……



