碧斗が滉とバイトへ行く時、玄関先まで私が行くと先に出た滉のあとすぐドアをバタン、と閉めた。
「 呼んで、俺の名前 」
真剣な碧斗に、逃げの言葉が見つからなくて……
「 あ… 碧斗 」
「 これからはちゃんと呼べ、伊織 」
うん、と赤くなりながら頷いた。
私の髪をクシャクシャと乱して碧斗は行ってしまった。
もう、これだけで体から力が抜けてしまう。
私、どんだけ好きなの……
一人静かな部屋で滉に言われた事を考える。
落ち着かない中で電話が鳴り、母からだった。
夜ご飯を一緒に食べないかと家に呼ばれた。
なかなか気を抜けないまま一人家に向かった。
「 ただいま~ 」
って、気不味いよ…
なんか、後ろめたい気分。
「 伊織、お稲荷さん好きでしょ、わさび稲荷もあるから 」
「 手巻き寿司まで… 豪華、だね 」
あー、お母さん幸せそう。
「 ねぇ伊織…… 毎日冷蔵庫が食材で埋まってるって幸せだわね 」
れ、冷蔵庫っ……



