なんで、早退してまでここに……
あ~ ダメだ。
私が向かうべきは優雅君でしょ、なのに……
私の時間は止まってる。
あんたのせいで……
「 俺が風邪引いたら…… 」
「 え… 」
「 ここにお前がいるじゃん、だから困らない 」
ほら、ね… あんたのせいで、私の心が傾くの。
気持ちが高まる。
碧斗、あなたが好きって思い知らされる。
浴室前から私へと近づく碧斗に、動けない。
まるで、セレナーデを奏でている音が聞こえるようで……
好き…
碧斗が、好き……
気持ちの高ぶりの中、目の前に碧斗が、手を掴み引き寄せて……
「 俺の声聞いて、帰ってきたんだろ 」
「 違っ… 」
「 違わないだろ 」
ダメだよ、だってダメだもん。
わかってるくせに……
「 離して、お願… 」
「 黙れ 」
―――んっ…。
首筋にチクリと小さな痛み。
甘く、切なさある痛みが痕をつけた。
私に、碧斗の唇が触れて……



