用はそれだけだと言って、最後に一言。



「 よろしく、兄貴さん 」



行ってしまった優雅に、碧斗は無言の怒りを抑える。

それがわかる滉。



「 碧斗…… 優雅が本気とは思えないけど、大事にはすると思う 」

「 優雅を紹介したのは俺だし、別に関係ない 」

「 お前は嘘つきだな、気持ちなんて隠そうとしたって表に出るもんなんだよ、バカだなお前は 」



滉に言われて見たのは深夜に伊織が入れたコーヒーのカップ。

そのままあるカップに、はっきり覚えているキス寸前だった事……



「 滉…… 妹として見るってどうやるんだ?」

「 碧斗… 」

「 わかんねぇよ、なんでアイツが…… 」

「 あの時、声かけてれば少しは違ったかもな 」

「 ナンパするみたいだろ、本屋から出たのに引き返して声なんかかけれるかよ 」




あの日、書店で伊織が一目惚れしたのは碧斗……

あの日、碧斗もまた伊織に一目惚れしていた。

それは交わることなく過ぎ、再会したのだった。


家族となるべくして、再会した二人だった。




「 滉… 俺、伊織が好きだ 」