例えば、XXとか。


アイツが、私を看病してくれてる。

なんで?

口も聞かないのに、なんで……



「 りんご、食べろ 」



え… 食べろって言われても……

毒、ないよね?



看病してくれている碧斗に対して変に疑う私はどうかと思う。

言い方は刺々しいが優しいと感じる。

すると、碧斗がスプーンを私の口元に。



「 な、何…… 」



まさか、あれ? あーん、しろって?



「 口、開けろ 」



やっぱり!!



真面目に私に食べさせようとしている碧斗。

私は病人、介護されている身。

甘えるのが恥ずかしい上に、食べさせてもらう、さらには目の前にいるのが碧斗……



「 うまいから 」



言われて、碧斗の優しさに触れるみたいに、口を少しだけ開ける。

口の中へリンゴの甘味と酸味、じわりじわりとゆっくり喉を通る。



「 ……おいしい 」

「 だろ!」



碧斗の、初めて見る笑顔。

あんなにひどい悪魔みたいな嫌な奴だと思っていた碧斗の笑顔。

この時の、ドキドキは碧斗にはわからない。



……ずるいよ、嫌な奴なのに。