建築学科、製図室にいる碧斗。
建物の平面図を描いている。
そこへ近づく一人の女がいた。
「 …へぇ すごく上手ね 」
碧斗は製図に集中しているだけでなく、どちらかと言えば伊織の事を考えていた。
そのため、隣に立ち話しかける女にすら気づいていないようだ。
「 そんなに集中して疲れない? 碧斗 」
名を呼ばれ、横を見て驚いた碧斗。
「 亜稀っ お前、なんでここに…… 」
驚きのあまりそれ以上言葉がない。
立ち去ろうとする碧斗に亜稀は……
「 逃げないで、碧斗! 」
止まる碧斗は亜稀に背を向けている。
その背に、亜稀はそっと寄り添い腕を回す。
「 碧斗の背中… 昔より広くなったね 」
碧斗は亜稀の腕を下ろし向き直ることなく口開いた。
「 亜稀… 俺たちはもう終わってる。今の俺にはお前は必要ない。
昔より広くなったってのは、それだけ月日が経ったって事だ、過去なんだよ。
振り返る事はない、俺を追うな……
サヨナラだ、亜稀 」
「 碧斗… 待って、碧斗っ!」
振り返らず、碧斗は製図室から出ていった。
亜稀との思い出はすでに過去のもの。
碧斗は伊織を思いながら、前を見ていた。