見送った優雅の車。

部屋に向かい行く私がいるとは知らない碧斗に、亜稀の唇が重なっていた。


一歩一歩、確実に部屋に近づく……


鍵を開けたが、開いていたドア。

そして、私に写った光景……



え――――……………



「 伊織っ… 」



な、に……


なんで彼女が、ここに?

嘘… 嘘だよ、ねぇ……



「 伊織っ!!」

「 碧斗、ダメ!! 行かないでっ 」



私は、飛び出していた。

自分の目に入った二人を…… 記憶から消したい。

私の目を隠してくれる人は、いない。

ただ、走って… 走って……


唾も飲み込むのが困難なほど走り息を乱した。




誰か…

助けて、誰か……



「 …うぅっ…… 」



どうして、こんな事に?

私が何かした?

碧斗、信じろと言ったのに……




なんでよっ……




ガードレールを支えに声を押し殺し泣いた。

泣かないと、苦しい。

碧斗がキスしていた光景が、目に焼きついてしまった。