「俺の親、実はそのときすっげー険悪でさ、離婚寸前だったんだ。もうお互いに口利かないし、干渉しませんって感じでさ。でも、その騒動のおかげでさ、親父もお袋も俺を抱きしめて泣いてくれたんだ。無事でよかった、って。ま、その前に親父にはげんこつ一発くらって、お袋にはビンタされて、俺も泣いたんだけど。
3人でひと固まりになってバカみたいに泣いてるうちにさ、たぶん、3人とも思ったんだ。こうやって3人で泣けなくなったら、それってすごく悲しいことなんじゃないかって。
それから、少しずつ親父とお袋がまた昔みたいに話すようになっていったんだ。俺も、2人が仲直りできるようにいろいろ動くようになった」


トモキはそう言うと、ちょっと恥ずかしそうに続ける。


「その年、俺がサンタさんに頼んだプレゼントはさ、俺のお父さんとお母さんが、また前みたいに仲良くなってほしいってことだったんだ。だから、そのおっさんはサンタだったってわけ」


わたしは、自分の中でいろんな感情が洗濯機の中みたいにぐるぐる回っていくのを感じた。


そして、一呼吸おいて言った。


「バカじゃないの」