「見透かされてるな」
「いいえ。全部は、わかりません。……ただ。仕事が辛いように見えます」
「仕事は辛くないさ」
ライブ会場に出向いたときに、会った。
ジンさんの同僚さんに。
彼は気さくな若い男性だった。
ジンさんを慕っているんじゃないかな。
「うしろめたいですか」
ジンさんがヒトを喰らう悪魔だと
彼は、知らない。
知られてはならない。
「そうかもな」
ソファに座り俯くジンさんは
生まれながらにして宿命を背負っている。
どれだけ孤独の中にいるんだろう。
「ジンさんのせいじゃないです」
誰のせいでも、ない。
「ジンさんは。存在して、いいんです」


