人間の血なんて。
見慣れている。
数え切れない程、食べてきたから。
なのに、どうして
――見るのが、怖い……?
「AMALIさん!? 戻って下さい! 控室に鍵をかけて、誰も入れないようにと、あれほど……」
誰かが寄ってくる。
「どいて」
「ここは危険です。はやく部屋に――」
「どけって言ってんの」
僕は、肩を掴んできた男を、振り返らずに片手で突き飛ばした。
か弱いフリなんてしてる暇、ない。
「リョウコ」
僕は、リョウコの前まで辿り着いた。
青ざめ、ぐったりしている。
すごい血溜まり。
全部、リョウコのだ。
「救急車は?」
近くにいたスタッフに問いかける。
「間もなく」
間もなくって、いつ?
僕が病院まで運んだ方がはやいでしょ。
いや
こんなの、もう、
――――間に合わない
人間は、弱い。
すぐに、息たえる。
「……AMALI?」
「!」
リョウコが、弱々しい声で、僕を呼んだ。


