* 「どうかしましたか、羽山さん」 職場の廊下で背後から声をかけてきたのは、部下の上原昇(うえはら のぼる)。 爽やかな黒い短髪。少し日に焼けた肌。 真面目を絵に描いたような、正義感の強い若者。 相変わらずキラキラした目をしてやがる。 日頃から『羽山さんみたいになりたいッス!』などと言って俺のことを尊敬してくる。 ひとことでいうと、忠犬。 俺を見つけると尻尾振ってやってきて。 俺の頼みならなんだってきく。 そんな上原が、きょとんとした顔で見てくる。