あのときよりも、力強い。 ちょっと痛いくらいで。 だけど、それが心地良い。 「ジンさん」 「ん?」 声は、すぐ近くから聴こえてくる。 「ジンさん」 「……なんだ」 「ジンさんも、呼んでください」 「…………」 「わたしの名を」 「莉音」 「もっと」 「……莉音」 「もう一度」 「何回呼べば気が済む?」 もっと、もっと。 たくさん呼んでほしい。 「声が枯れるまで」 「アホか」 今でも十分幸せなのに。 より求めてしまうのはどうしてなのだろう。