――理解するよりも先に、
両腕がわたしの背中にまわされた。
「莉音」
ジンさんが、わたしを……
「っ、」
ギュッと、抱きしめたんだ。
それは、あまりにも唐突で。
予想外の出来事で。
だから、驚きのあまり手からグラスが転がり落ちてしまった。
幸いカーペットの上なのもあり割れはしなかった。
きっと中に残っていた少量の水がこぼれたが、ジンさんはそんなことを気にしてはいない。
「……ジン、さん」
「苦しいか?」
「いえ。……あったかいです」
「そう」
「……嬉しいです。また、こんな風に抱きしめてくれて」
――出逢ったときのように。


