「莉音は『普通』から遠のいていってる。俺に出会ったせいで。おかしな話、考え方が俺基準になってるというか。どんどん染まってる」
「…………」
「もっと自覚した方がいい。俺に、人生を狂わされているってことを」
ジンさんに、わたしが、
人生を狂わされている――?
「本当にいいのか? ここにいて」
そんなことを聞かれても答えはひとつしかない。
あなたを見たときからこの気持ちは膨らむことはあってもしぼみはしないんだ。
「ジンさん。わたし、ジンさんとご飯食べるのがいちばん好きです」
わたしの言葉に目を見開くジンさんに向かって続けた。
「きっとツナマヨのオニギリでなくても。苦手な梅干しのオニギリでも、ジンさんと食べればそれは絶品ですよ」
「……なんだそりゃ」
クスリと笑うジンさん。
それが呆れ笑いではなく照れ笑いのように見えるのは、気のせいかな。
「なにを食べるかじゃなくて。誰と食べるかってことが大事だと思いません?」
「……!!」
「一生わたしの作った手料理食べてもらえなくても気にしません。人間と違って当たり前です。わたしはジンさんに『人らしさ』なんて一度も求めていないですよ? 人間同士よりもずっと素敵な関係だって築ける。ジンさんとわたしなら」


