ブラックサンタクロース




――――?


「『わたしを食べて』だと? 無理いうな」

「無理?」


すごく、ドキドキする。

ジンさんに触れられている上に、こんなに近くから、まっすぐ見つめられているから。


「当たり前だろ?」


その『当たり前』って
どの『当たり前』ですか。


心が汚れていないと判断したから
『当たり前』なのか。


友達みたいに身近になれたから
『当たり前』なのか。


大切にしてくれているから
『当たり前』なのか。


わたしがこれからも必要だから
『当たり前』なのか。


「まだ、引き返せる」


そういうと、わたしから手が離れた。

だけど頬はまだ熱をおびたままで。


もう一度、触れて欲しいと思った。


「俺はな。お前になんにも与えてやれないんだ」


ジンさんが、ゆっくり諭すように話し始める。


「俺には力はある。リンゴどころか岩だって木っ端微塵に砕ける。だけど普通にできることができない」 

「普通にできること?」

「ああ。それでも俺を選ぶのか?」