ブラックサンタクロース



ジンさんがお風呂からあがってきたとき、わたしは夕食の準備をして待っていた。


準備といっても買ってきたオニギリを目の前に置いて待っていただけだけど。


「またそんなもん食うの?」


眉をひそめるジンさん。

黒い半袖のTシャツとグレーのゆったりしたズボンを履いている。

外出時はいつもスーツやタイトな服装なので、ジンさんのこういう姿はおうち限定で貴重だったりする。


「美味しいですよ?」

「お前、ツナマヨ好きだな」

「はい」


三角オニギリのビニール袋を剥ぐ。


「ツナとシーチキンの違い知ってるか」

「……いえ。意識したことなかったです」

「ツナの原料は?」

「マグロ……とかですかね」

「間違ってはない」

「ジンさん、ツナの正体知ってるんですか?」

「知ってるというか、なんとなしに調べたことがあって。どうでもいい知識で忘れてしまったつもりが、ふと思い出すことはあるな」

「雑学王ですね」

「なんの役にも立ちやしねえ。そのオニギリは俺のカラダを作っちゃくれないから。だけどまあ……DHAやEPAが豊富だから、悪くはねえなと。ただし栄養は偏らずに満遍なくとれよ」

「教えてくださいよ。食が細くても栄養取る方法」

「莉音のためなら俺の無駄な知識は役に立ちそうだ」

「いただきます」


かじりついたとき、パリッと気持ちのいい音が鳴り響いた。

美味しい。だけどわたしは、水気を含んだしっとりとした海苔もまた好きだったりする。