仕事終わり、俺は美咲のアパートへと向かった。
『これから行く』と連絡すれば断られる可能性があるため、何も言わずに突然訪ねることにしたのだ。
インターホンを鳴らすと、『はい』と事務的な声がした。
「美咲、俺だけど」
『え、北川?』
「ちょっと話がしたいんだ」
『……わかった』
美咲は俺を部屋へ招き入れてくれたけれど、その表情は戸惑いに満ちている。
やっぱり、俺の予想は当たっているのかもしれない。
ソファではなくカーペットの上に正座をすると、美咲も向かいで同じようにした。
心臓が壊れそうなくらいに波打っている。
それでも、ここまで来て聞かずにはいられない。
「なあ美咲。もう俺のこと好きじゃない?」
「え?」
「最近避けてるだろ」
美咲は視線を彷徨わせ、言葉を探しているように見えた。
もう決定的だ。
「あのときは美咲も酔った勢いもあったんだろうから、もういいよ。俺のことが嫌になったなら、別れ――」
「ちょっと、待っ……」
美咲は急に口元をおさえ、トイレへと駆けていく。
中からは、ゴホゴホと咳込む声が聞こえてきた。
うめき声も聞こえるから、只事ではない。
しばらく経って、美咲は憔悴した様子でトイレから出てきた。
美咲の元へと駆け寄って、両方の肩を掴む。
「おい、体調が悪いって本当だったのかよ。大丈夫か?」
何か悪い病気なんじゃないか、と思うと血の気が引く思いだった。
けれど、美咲は瞳いっぱいに涙を溜めて首を横に振った。
「実は妊娠してて」
「妊娠……?」
目の前で何かがパチッと弾けた気がした。
「ごめん、北川には迷惑かけないから」
「迷惑って……」
「北川、主任になったばっかりだし、これから仕事もどんどん忙しくなるでしょ?だから――」
「そんな大事なこと、俺の仕事の心配なんかして黙ってたのかよ!」
つい大声を出してしまい、美咲が閉口する。
俺は少し屈んで美咲に目線をしっかりと合わせた。
「結婚しよう、美咲」
「北川……」
美咲が真っ赤になった目を丸くする。
するりとプロポーズの言葉が出たことに、自分でも驚いていた。
けれど、美咲と、数か月後に生まれてくる子どもとの幸せな未来が、俺には現実的に想像できたのだ。
「子どもの名前、何にしようか」
美咲は表情を和らげて、ふっと吹き出した。
「まだ性別もわからないのに」
美咲をぎゅっと抱きしめると、美咲もまた、俺の背に手を回して抱きしめ返してくれた。
『これから行く』と連絡すれば断られる可能性があるため、何も言わずに突然訪ねることにしたのだ。
インターホンを鳴らすと、『はい』と事務的な声がした。
「美咲、俺だけど」
『え、北川?』
「ちょっと話がしたいんだ」
『……わかった』
美咲は俺を部屋へ招き入れてくれたけれど、その表情は戸惑いに満ちている。
やっぱり、俺の予想は当たっているのかもしれない。
ソファではなくカーペットの上に正座をすると、美咲も向かいで同じようにした。
心臓が壊れそうなくらいに波打っている。
それでも、ここまで来て聞かずにはいられない。
「なあ美咲。もう俺のこと好きじゃない?」
「え?」
「最近避けてるだろ」
美咲は視線を彷徨わせ、言葉を探しているように見えた。
もう決定的だ。
「あのときは美咲も酔った勢いもあったんだろうから、もういいよ。俺のことが嫌になったなら、別れ――」
「ちょっと、待っ……」
美咲は急に口元をおさえ、トイレへと駆けていく。
中からは、ゴホゴホと咳込む声が聞こえてきた。
うめき声も聞こえるから、只事ではない。
しばらく経って、美咲は憔悴した様子でトイレから出てきた。
美咲の元へと駆け寄って、両方の肩を掴む。
「おい、体調が悪いって本当だったのかよ。大丈夫か?」
何か悪い病気なんじゃないか、と思うと血の気が引く思いだった。
けれど、美咲は瞳いっぱいに涙を溜めて首を横に振った。
「実は妊娠してて」
「妊娠……?」
目の前で何かがパチッと弾けた気がした。
「ごめん、北川には迷惑かけないから」
「迷惑って……」
「北川、主任になったばっかりだし、これから仕事もどんどん忙しくなるでしょ?だから――」
「そんな大事なこと、俺の仕事の心配なんかして黙ってたのかよ!」
つい大声を出してしまい、美咲が閉口する。
俺は少し屈んで美咲に目線をしっかりと合わせた。
「結婚しよう、美咲」
「北川……」
美咲が真っ赤になった目を丸くする。
するりとプロポーズの言葉が出たことに、自分でも驚いていた。
けれど、美咲と、数か月後に生まれてくる子どもとの幸せな未来が、俺には現実的に想像できたのだ。
「子どもの名前、何にしようか」
美咲は表情を和らげて、ふっと吹き出した。
「まだ性別もわからないのに」
美咲をぎゅっと抱きしめると、美咲もまた、俺の背に手を回して抱きしめ返してくれた。



