『陰陽術は今回の場合、被害がほぼゼロに近いものにできるんだ。

アレクトを引きずり出すのは実力行使だけど‥‥』


「タナトスを抑えるのには最適って言うんでしょ?」


『うん。』



アレクトを引きずり出すのは、香山先輩を使っているのをまずやめさせること。

そこから、魔力で引きずり出すしかない。




「けど、タナトスは初めは潰すって言ってたじゃない?

どうして陰陽術で抑えようとしてるの?」


『‥‥いろいろ考えたんだ。
これでいいのかなって。』



ゆっくり歩いて五芒星の真ん中に行く。



『改心する気があるなら、それもありなんじゃないかって。』


「その僅かな可能性な賭けようってこと?」


『そうなるね。
神様だって生きてるんだもの。

可能性が少しでもあるなら賭けてみたい。』



僕のこの言葉に、時雨は博打好きなの?と笑う。

僕自身、かなり無謀な賭けだとは思う。
だけど、夢くらい見たってバチはあたらないでしょ?




「その夢は杞憂に終わるだろうな。」


『「っ!!???」』




二回のバルコニー席にいる、香山先輩‥‥アレクトの姿。

柵を飛び越え音もなくふわりと僕らの前に降り立つ。