体育館



静まり返ったこの場所はもうすぐ戦場になる。

恐らくだけど、アレクトを元に戻せばタナトスが出てくるだろう。

契約主がいるのか、単独で動いているのかは分からないけど僕は負けるつもりはない。


この学園の結界を揺るがし、マンティコアを差し向け、アレクトを利用した。

関係のない人まで巻き込んだタナトスを僕は許さない。




『力を貸してね、‥‥‥‥時雨。』


「大きい五芒星だね。」




体育館の入り口に音もなく来て立っていた時雨がコツっと音をたてて体育館へと入ってくる。



『これくらいないと、捕獲できないだろうしね。』


「そうだね。」


『でしょ?』


「それにしても、いきなり訓練と並行して陰陽術を学べなんて言われた時は、どうしようかと思ったよ。」



時雨が笑う。
黒の髪が揺れ、黒の式紙が5枚舞い踊る。



『おぉー、綺麗ー。』



しばらくして時雨の手元に戻ってきた式紙には五芒星が描かれており、舞うことのなかった1枚には何も描かれていないまま。



「ねぇ、眞佳?」


『ん?』



時雨は式紙をポケットにしまいながら聞いてくる。




「なんで、陰陽術なんて選んだの?」