『用件書いてねぇじゃん。』


「うん。
まあ‥‥何のことか何となくわかるけど。」




困ったように笑い、カバンから式紙を取り出す時雨。

しかし、その式紙はいつも時雨が使っているものとは色が違う。

いつものは白だが、今出したのは黒。

いつ聞いたかは忘れたが、白の式紙は精製するのは神力が余程なくなっていない限り簡単で何枚作っても神力の消費はほとんどないんだそうだ。

ただ、黒は精製が難しく1枚作るだけで神力の消費が激しいためあまり作りたくないのだと本人が言っていた。

その黒の式紙が少なくとも時雨の手元に5~6枚はある。

恐らくカバンにもまだ入っているんだろう。

黒の式神の威力や効力がどんなものなのかは俺は知らないが、白の式神とは比べ物もならない力を持っているんだろうな。



『黒の式紙って、作りたくねぇんじゃねぇの?』


「まあ、出来ればね。
けど、今回は特別だから。」



そう笑う時雨。



「行ってくるね。」



笑顔をそのままに、教室から出ていく時雨。

そのあっさりさに俺はもちろん、眞雪先輩でさえも驚いている。

眞雪先輩もなんの連絡か分からないんだろうか。