はじめはオロオロしてたけど、もういつものことだから慣れた。

その時、僕の真後ろにある柱の後ろから控えめに声をかけられた。
僕にしか聞こえないくらいの大きさ。

むしろ、僕でもしっかり聞かないと聞こえないくらい。


「隊長。〝例の件〟なんですが‥‥」


『なにか分かった?』


「はい。
隊長の読み通り、神魔学の一つ‥‥魔行術が関わっているようです。」



魔行術。

前にも説明したと思うけど一応‥‥。
魔物へ移行させるための術のこと。



『そっか。
わざわざごめんね。

それにしても‥‥その変装はないんじゃない?紫乃。』


「‥‥‥‥仕方ないですよ、面白半分で隊長のお母様にやられたんですから。
断れるわけないじゃないですか。」



黒のモジャモジャの髪に時代遅れといわれる瓶底メガネ。

馬鹿みたいな変装を取れば何にも染まらない白い髪とオレンジの目の美少年であるこの子は嵐燕S部隊所属。

天原 紫乃(あまはら しの)

はじめに言ったよね、転入生の話。
いじめられない理由は多分だけどこの子の立ち回りが上手いから。

みんなも実は存在を忘れていたでしょ?