聞いても答えなんか返ってこないのに。
そのまま、尊くんに触れていた手を引こうとした時だった━━━━。
「━━━み…さと……」
え……?
途切れ途切れに聞こえた声に、ドクッと心臓が変な音を立てた。
わたしの手を掴んで、確かに呼んだその声に胸がギュッと締め付けられた。
それはわたしの名前じゃない、知らない人の名前……。
みさと……さん?
聞いたことない名前に動揺してる自分がいる。
この学校に、みさとって名前の女の子はわたしが知る限りではいない。
ましてや尊くんは女の子に興味がない。いつも女の子を呼ぶときはだいたい"キミ"って呼んでるのに。
嫌な予感……胸のざわつき……。
なんの確証もないのに、その人が尊くんにとって、とても大切な存在なような気がしてならなくて。

