「そんな怖い真顔でこっち見ない見ない」


この状況で真顔以外の表情なんか思いつく?思いつくなら教えて欲しいくらい。


「別にさ、千湖ちゃんが尊のこと好きで追いかけるのは勝手だし、好きって気持ちを持つことも勝手だと思う。だけど」


ほら、この顔……
どこか冷めたようで、普段見せる顔とは違う一面、いつもとは違う鋭い瞳。


「尊の気持ちは千湖ちゃんのものにはならない」


っ……、わかってる。そんなこと他人に言われなくたって、自分が一番よくわかってる。


だけど、こんな風に自分以外の人からはっきり言われると心にくるものなんだって。


ましてや尊くんのことをよく知る戸松くんに。



「どれだけ千湖ちゃんが尊を想ってもね」


意味深な笑み。
きっとこれ以上聞いたところで何も返ってこないとふんだ。