彼はそんな私の心配をはねのけるようなとびきりの笑顔を見せた。


「うん、めっちゃかっこいいと思う。次作る曲で使いたいね」

「ほんと!?」

「うん、何なら今作ってる曲にちょうどかも」

「そうなの!?」

「ちょっと前からあっためてるコード進行があるんだけど」

「何?どんな?」


彼はパソコンの横に置いてあったギターに手を伸ばし、4つのコードを弾いた。

彼らしい、落ちてほしいところに落ちるようなコード進行だ。


「......こんな感じ?」

「2番目から3番目に変わるのがめーっちゃいいね、気持ちいいところにハマるね」

「だろ?」

「うん」

「調は一緒だし、前奏はちょっとコード進行変えようと思ってるから、お前の弾いたピアノが良い感じで入ると思う」

「え!すごい!どんどん曲が出来る!」



ああこれだ。私たちが揉めずにバンドを続けられる理由。


お互いが良いと感じるものは違っても、なぜかお互いの考えるフレーズだけはお互い良いと思えるからこそ、このバンドは、この私たちのコンビは成り立っているんだろう。




彼がギターを抱えたままヘッドホンをつける。

DAWソフトで新しい空のプロジェクトが開かれる。




さあいつご飯を食べられるだろうか。

このモードに入った彼は全然休もうとしない。




それでも私は、自分の思いつきを彼に褒められるのが最高に嬉しいのだ。