「…くしゅんっ」

「花粉症?」

「そうで……くしゅんっ」





大変だね、なんて笑って言う先生の隣を歩く。



今日は3月14日。


世にいうホワイトデーだ。



とっくに春休みに入った私は少しだけオシャレに力を入れて来た。


だって…今日はホワイトデー。

少しは期待してしまうでしょ?





「目、つぶってて?」





お昼ご飯を食べた後、先生にそう言われて素直に目をつぶる。


なんだか首元がくすぐったい。





「開けていいよ」





目を開けるとテーブルの上に鏡があって、覗くと私の首にはネックレスがかけられていた。


ハートが可愛く、光り輝いている。





「これ…!」

「この前ほしいって言ってたでしょ?」

「でも…」





雑誌を見て、ほしいと思ったのは間違いない。


でもちゃんとしたブランドのものでめちゃめちゃ高かったんだ。


だから諦めてたのに…





「こんなに高いの…」

「一緒にしないでほしいんだけど?」

「え?」

「高校生とか、ガキと一緒にしないでよ。
俺はもう立派な大人なの。彼女にこれっぽっちもプレゼントできなくてどうするの」





そう言って満足気に笑う。


そっか。先生は大人で…私はやっぱりガキ、なのかな。