「…っ、私もっ、こんなふうに人を好きになったのは初めてだからっ、先輩が離れていくのが不安でっ……!」


「……。」


「私より先に大人になっちゃうのもっ、来年っ、先輩がいないこの学校で過ごすのもっ、先輩がどんどん私から離れて行っちゃうみたいで……すごく怖いっ…!」



日常という小さな幸せ。


でもそれは、いつか消えてしまうかもしれないという不安と隣り合わせの灯だ。



当たり前のことが突然目の前からいなくなることを体験したら、それはずっと頭にこびりついて取れない。

お父さんのときのように。



「……大丈夫だよ。」


「先輩…。」


「お互いに不安になることはあると思うけど、さらちゃんが不安になるたびに、こうやって俺が抱きしめてあげる。」



ああ。先輩の腕の中は、いつもあったかい。