影と闇

「今の見た?」


「見た見た。芦谷さんの格好、おかしいよね……」


「いや、格好だけじゃなくて顔色まで悪かったような気がする」


「幽霊みたいだっていうの? あそこまで顔色を悪くした芦谷さん見たことないよ」


「私も。グループ決めのときも様子がおかしかったよ」


「あ、私も見たわ。片桐さんが鹿目さんと楽しそうに話してるところを鋭い目で見てたよね」


「もしかして、自分が一番仲がいい片桐さんが離れていくと思ってあんな顔をしたんじゃないかと思うんだけど」


「でも、それにしてはずいぶん怖かった気がする」


「他に怒りの感情がうずまいていたりして」


「あ〜、それなら納得できるわ……」


私と蘭子のうしろに座る女子ふたりが、前に私がいることにまったく気づかないで話している。


見てたんだ、彼女たちも。


計画用紙を先生のところに出したあとに見た末那の表情をしっかりとらえていたんだ。


クラスメイトをおかしくて怖いと思わせるほどに、今日までの末那の行動は異常だった。


服屋に行った帰りにミカと再会して話している途中で慌てて帰ったり、私に鋭い視線を向けたり。


いったいなにがあったんだろう。


首をかしげる私を尻目に、蘭子が楽しそうな声音でつぶやいた。


「なんだか今日の芦谷、怖いんだけど〜。負のオーラが出まくりって感じ〜」