いつの間にか作っていた握り拳にギュッと力が無意識に入ってしまい、短く切ったはずの爪が皮膚に食い込む。


血が出るほどではないけど、目にうっすらと涙が出てしまうくらいの痛さだ。


なにも言わずに押し黙っていると、私に気づいたらしい蘭子が視線をこちらに向けた。


「茅乃、ごめん。阪口と話してたら夢中になっちゃって。阪口が子供みたいなこと言うからおもしろくてさ」


「子供みたいって、私たちまだ高校生じゃん。かごめかごめとか花いちもんめやっててもおかしくないでしょ」


慌てて手を振る蘭子の肩に手を置き、おかしそうに笑う理子ちゃん。


かごめかごめと花いちもんめ。


まさに幼稚園児や小学生がやっていそうな遊びだ。


その遊びを女子高生がやる可能性はきわめて低いだろう。


小さい子供向けの遊びだから、高校生がやると逆に笑われそうだ。


でも、理子ちゃんの口からそれらの言葉が出てきたことで、ふっと笑ってしまった。


笑いに駆られたせいか、皮膚に食い込んだ爪の痛みが徐々にひいていく。


「あはは、かごめかごめと花いちもんめって……。理子ちゃんおもしろいね」


理子ちゃんの発言があまりにもおかしかったためか、目に涙が浮かんだ。


目にたまった涙を指でこすって、でもできるだけ強くこすらないようにした。


今日は思い切ってメイクも少ししてきた。