影と闇

なにかないかと入口近くに目を向けた瞬間、体に電気が走ったような感覚がした。


入口近くにあるマネキンの服を見て、思わず目を見開いて顔をガラス張りの壁にくっつける。


そのときに店の外でたまたまこちらを見ていた人たちがギョッとした目で私を見たが、まったく気にならなかった。


マネキンが着ている服にひと目ぼれしたのだ。


さっき見たワンピースの生地よりも少し濃いピンクのワンピースだが、胸もとにはレースがほどこされており、裾はフリルのついたフレアになっている。


まさに可愛いというにふさわしい服だ。


しかし、私がひと目ぼれしたのはそのワンピースだけではなかった。


そのワンピースに合わせてマネキンの足にはかれたベージュのパンプスにも興味がいった。


これは絶対にゲットしよう!


そう思い、近くにいた店員さんにマネキンの服と靴がほしいと伝えた。


店員さんがびっくりした顔をして私を見たとき、ちょうど会計を終えたらしい末那がこちらにやってきた。


「いい買い物した〜……って、あれ? 茅乃ちゃんも買い物するの?」


しまった。


服を見るのに夢中になって、末那に買いものしたいことを言ってなかった。