影と闇

必死に表情をキープして、引っ込めた右手でバッグを持ちながらそう言った。


そうだよ。


私たちはもう高校生だから、迷子になるなんてありえない。


もしかしたら末那は、私のことを幼い子供だと思っているの?


誕生日が自分のほうが早いから、たった数週間しか誕生日が違わない私を妹として見ているのか。


もしそうだったらやめてよ。


くすぐったいから。


親友にこんな扱いをされるなんて思ってもみなかったことだからなのか、なぜか心の中に不安がどっと押し寄せてきた。


再び視線をそらしてうつむくと、末那が「茅乃ちゃん」とつぶやいた。


なんだろう。


不思議に思って顔をあげた瞬間、頬をギュッとつねられた。


「末那……ひゃめてよ……」


「あはは、茅乃ちゃんってばおもしろい。やっぱりからかいがいがあるな」


「それって……」


「ま、いいや。べつに手をつながなくても、私たちがはぐれるなんて想像できないしね」


頬をつねっている末那がニコニコと笑いながらおもしろいと言ったのでいったいなんだと尋ねようとしたが、言葉をさえぎられた。


それと同時に頬を引っ張る感触も消えた。