影と闇

背中を見つめるように立っている末那が目を見開いてるのもおかまいなしに、真剣な目つきで言葉を返した。


「うん。末那がそう言ってくれるなら、私は一緒についていくよ」


私と末那にしか聞こえない小さい声で、だけどハキハキとした口調で言いたいことを口にした。


今の私の言葉は、さっきのふたりの女の子にはまったく聞こえてないだろう。


なにごともなかったかのように歩きはじめる人たちがせわしなく行き交う様子が、その証拠だ。


心の中でほっとひと安心したと同時に、目を見開いていた末那がニコッと笑った。


「ありがとう、茅乃ちゃん。じゃ、行こ」


不意に左手を差しだされ、今度は私が目を見開く番だった。


驚いたのは末那が表情を急に変えたことではなく、末那が突然私の手を握ろうとしたことだ。


お世辞にも可愛いとは言えない私の手を握りたいなんて、誰が思うのだろうか。


地味な私の手を、きっと誰も死んでも握りたくないだろう。


そう言いたかったが、末那が私を責める言葉を聞いてまた怒りながら泣くかもしれないと思い、口をつぐんだ。


右手を末那の左手の近くまで持ってきたところで、バッと右手を引っ込める。


「ま、迷子にはならないから……」