影と闇

バカだな、私。


最初から期待しないほうが傷つかずに済んだのに。


目に浮かぶ涙をジャケットの袖でぬぐった。


帰ろう。


これ以上末那が怒り泣きで叫ぶ姿なんて見たくないし、周りからまた地味だと言われて深いダメージを負いたくない。


末那が肩を上下に動かして呼吸している隙に、さっさとその場をあとにしようと歩きだした。


数歩進んだそのとき、末那に引き止められた。


「ごめん、茅乃ちゃん。茅乃ちゃんがあまりにも自分自身を責めてる感じがしたから。でも今の言葉は本当だよ。とりあえず一緒に服屋に入ろ?」


さっきの口調とは違う、優しく包み込むような声。


今までならこの声を聞いて安心したが、なぜかいつまでたっても安心しない。


さっきの女の子ふたりの会話が嫌でも耳に残っているのだ。


だけど、末那が本気で可愛いって言ってくれたなら、一緒に服屋に入らない理由がなくなる。


さっき聞いた会話はもう忘れたほうがいいかもしれない。


もう涙が出てこないのを確認したあと、体を声のしたほうに向けた。