影と闇

そう言ってから後悔した。


彼女に向かってなんてことを言ったんだろう、私。


呼び捨てはできないと彼女の気持ちを考えずに断った私はなんてバカなんだろう。


はぁ、と小さいため息をついた直後、彼女が再び笑顔を見せた。


「うん、それでもいいよ。呼び捨てじゃなくても、私は片桐さんと仲よくなりたいだけだからね」


よかった。


彼女を怒らせずに済んだようだ。


ほっと安堵の息を吐き、胸を撫でおろす。


「あ、ありがとう。私も仲よくなりたい！」


嬉しさが頭の中で大きくなったせいか、つい声のボリュームを上げてしまった。


他のクラスメイトがびっくりしたような顔を向けてきたので、慌てて視線を床に落とした。


恥ずかしい。


「あはは、片桐さんっておもしろいね。鹿目さんたちが片桐さんを『おもしろい』って言ってたけど、本当におもしろいね。だから仲よくなりたいって思っちゃうんだよね」


彼女のほうはてっきりドン引きするかと思いきや、むしろ大爆笑。


よほど私の行動がおかしく思えたのか。


クラスメイトの視線がこちらのほうに向かなくなったのを見計らい、彼女にあることを問いかける。