影と闇

なんで私に『ありがとう』って言っているの？


彼女の行動に疑問を感じ、小首をかしげると、彼女がニコッと笑った。


「片桐さんって、芦谷さんだけじゃなくて鹿目さんたちとも仲がいいよね。鹿目さんってなにを言っても機嫌を悪くしそうだからつい黙っちゃって。でも、まず決めないとはじまらないからって思って賛成したの。そのあとに片桐さんが鹿目さんの提案を受け入れるって言ったのを聞いてほっとしたの。それはたぶん、私だけじゃなくてクラスのみんなが思ってることなのかもしれないけど……」


そうだったんだ。


彼女も言いだすのはつらかっただろうに。


彼女が勇気を出して言ってくれたから、私も思っていたことを言えたんだから。


取り囲んでいた重い空気を破るきっかけをくれたのは彼女のほうだから、私にお礼を言われるなんて。


とんでもないよ。


「私のおかげじゃないよ。あなたのおかげだよ」


焦りながら両手を顔の前でブンブンと振る私を見て、彼女はポカンとした。


あれ？


もしかして私、変なこと言った？