影と闇

自分の心が傷つくくらいなら、なんで言ったんだろう。


そう思っても、一度言った言葉はもう二度と取り戻せない。


うつむく私に、末那が上体を起こしながら口を開けた。


「茅乃ちゃんを裏切り者だとは思ってる。でも、裏切り者だからって、茅乃ちゃんを避けるのは間違ってると思って」


「…………」


「お兄ちゃんから話聞いたかもしれないけど、私、幼稚園のときから人を傷つけてた。それは、私の心を晴らすためだった」


自分の心を晴らすため。


それは苦い言いわけにしかならない。


だが、末那の話は続く。


「人を殴ったりナイフで刺したり、いじめっ子を自殺に追い込んだり」