影と闇

目で末那に訴えるが、末那は胸ぐらを離してくれない。


お願い、離して!


心の中でそうつぶやいた直後、末那が口角を三日月のように持ち上げた。


ゾクリ、と背中に寒気が走る。


「ふふっ、ふふふ……」


私がイメチェンする前までのおだやかな表情とは違う、恐怖の微笑み。


狂気に満ちたその顔に、顔がさーっと青ざめていくのがわかった。


「芦谷! 茅乃から離れろよ!」


蘭子が顔を真っ赤にして叫んでも、末那は蘭子の言葉を無視する。


だが、無視された蘭子が黙るわけがなく、立ちあがって末那を引きはがしにかかった。