影と闇

蘭子は本気でそう思っているらしく、末那に満面の笑みを見せた。


だが、末那も少しの抵抗を見せる。


『は、腹黒さが増してるって……鹿目さん、本気でも冗談でもそんなこと言わないでよ……』


この言葉を聞いた瞬間、末那は蘭子に対して無理をしていると思った。


よく見れば、末那の目がうるんで涙がこぼれそうになっている。


無理しなくてもいい。


そう言いたいのに、喉の奥になにかが引っかかったかのように言葉にすることができない。


『あははっ。芦谷、声震えてるし〜。それに声小さくて全然聞こえないっつーの。もっと大きい声出してしゃべってよね』


末那のプライドをひどく傷つけるような言葉のナイフを容赦なく並べる蘭子。


ねぇ蘭子、お願いだから、末那をこれ以上傷つけないで。


自分がされて嫌なことは他人にしちゃいけないでしょ？


そんな言葉が頭の中で浮かんではすぐに消えてく。


板ばさみ状態になり、なんて言えばいいかわからない私をよそに、末那が思いっきり叫んだ。


『だから、腹黒さが増してるって本気で思ってなくてもそうじゃなくてもそんなこと言わないでよ‼︎』


『……っ⁉︎』