影と闇

蘭子の登場に疑問を覚える。


なんで蘭子が末那に話しかけているんだろう。


そう思った直後、点と点がひとつの線になったような気がした。


もしかして、数か月前に蘭子が足蹴にしていたのは末那だったの？


もしそうだとしたら、私は末那を助けようと思っていたということだ。


どちらにしても、私は末那を救ったことになったんだ。


だが、そう思う私を尻目に、蘭子が末那を睨みつけたまま言葉を続ける。


『私があんたを許すと思うの？ 私、あんたみたいな表面だけいい子ちゃんのこと嫌いなの。茅乃にいい顔してても、裏は性格ブスだもんね』


抑揚がなく、まるで気持ちがこもってないような蘭子の声に、末那は体を震わせた。


その瞬間、やっぱり、と思った。


蘭子の言っていた『表面だけいい子』、『嫌い』、『いい顔してても、裏は性格ブス』。


本当に嫌いな人でなければ、普通こんな発言はしないだろう。


なにも言わない私を尻目に、さらに蘭子が末那の姿を見てふっと笑った。


『はっ、やっぱり図星ね。表面だけのいい子ちゃんは他の子よりも腹黒さが何割か増してるよね。これだから見た目だけいい性格ブスは嫌いなの』