影と闇

「えぇっ!」


気づかなかった。


学校の女子全員に注目されている沖田くんが、私を恋愛の対象として見ていたとは。


これは現実?


驚きで言葉を返すことができず、頬をつねる。


ほどなくして頬に痛みが帯びてきて、手を離して頬をおさえた。


「本当に……?」


目をしばたたかせながら、いまだに顔を赤くしている沖田くんに言葉をぶつける。


こくんと沖田くんがうなずいた。


「本当だよ。去年俺が落としものを取りに学校に戻ったとき、その落としものを片桐さんが拾ってくれたでしょ? そのときに見た片桐さんの優しさと笑顔に惹かれたんだ」


去年?


あぁ、そんなことあったな。


1年前、私は図書委員の仕事をまかされて、図書室から出ていこうとしたときに落としものを拾ったんだっけ。


その落としものが沖田くんのものだったとは知らなかったけど、たしか落としものを届けたあと、私はこんなことを言った気がする。