影と闇

「なんで……なんで私のことほっとけないの? 私のことなんとも思ってないんでしょ⁉︎」


踊り場に響く私の声。


私のことなんてほっとけばいいじゃん。


どうして沖田くんは、自分のことよりも私のことを優先すべきだと思うの?


知りたいけど知りたくない、複雑な気分。


心の中でそうつぶやいたそのとき、沖田くんの声が頭上で響いた。


「俺は片桐さんが好きなんだよ!」


えっ?


私の言葉よりも大きく響いた沖田くんの叫び声。


怒りとも焦りともとれるその言葉が、頭の中で何度も再生された。


5回ほど再生させたところで顔をあげた。


視界に映ったのは、頬を赤く染めた沖田くんの姿。


顔も性格もいいと噂されている沖田くんが、私に赤くなった顔を見せている。


聞こえていたのに、なぜか私は沖田くんにもう一度言うよう問いかけた。


「今……なんて言ったの?」


「だから、俺は片桐さんが好き。恋愛的な意味で。俺、ずっと前から片桐さんのこと恋愛対象として見てたんだけど」